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岩戸ベースに秘められたデザインの旅

Japanese translation with the help of Sonobe Ayato


山頂からの電話、海岸沿いの敷地、そして静かな信念が鳥取の隠れ家を形作った


優れたデザインは、しばしばフィーリングから始まる。私たちにとって、それは風から始まった。


鳥取への日常的な調査旅行のつもりが、すぐに別のものになった。海岸線は、飼いならすことも、ロマンチックにすることも求めていなかった。放っておいてほしいのだ。


私たちは、かつて国士舘大学の修士課程で亮を教えたことのあるアトリエ・アンプレクスの南教授に連れられて早々に到着した。亮はアウトドア派で、勇敢で、冒険好きなことで知られている。時々、がっかりさせられることもあったが、それは私が一緒についていって、同じように大変なことをしなければならないことを意味していた。しかし、挑戦はいつでも大歓迎だ。かつてブレネー・ブラウンが言ったように: 快適さよりも勇気を。


その同じ旅で、霧に包まれた断崖絶壁の寺、投入堂へのハイキング中に亮は電話を受けた。汗びっしょりになりながら、人里離れた場所でかすかな電波をキャッチしようとして、彼が登山を中断したのを覚えている。南教授からだった: 「国士舘大学の非常勤講師に決まったよ」。その言葉は、風と不安定な電波の中でパチパチと音を立てていたが、なぜかこのタイミングに運命的なものを感じた。岩戸ベースでは、知的な厳しさと静かな覚悟の両方が求められる。準備はできていた。



押し付けるのではなく、生み出すコンセプト


当初から、私たちの目標は目的地をデザインすることではなく、雰囲気を守ることであった。


私たちはまず、ゆるいスケッチと遊び心のある形から始めたが、すぐに抑制が不可欠であることに気づいた。敷地とその周辺のコミュニティに配慮するために、私たちはすべてを縮小しなければならなかった。コンセプトボードは形よりも質感を重視し、レンダリングはシェルターと景観の境界線を曖昧にした。私たちは、どうすれば建物が目立たず、邪魔にならないかを考えた。砂丘、斜光、風に吹かれた芝生など、すでに存在するものが私たちの主なガイドとなった。


現地視察は観察の練習となった。フィリピン出身の私にとっては、ココナッツの木がないことが際立っていた。フィリピンでは、ココナッツの木は象徴的であり、時には危険でもある。しかし、ここではヤシの木がないため、大きなガラス窓を安心して使うことができた。それでも、ここは南国の避暑地ではなかった。四季、特に最も過酷な2つの季節を想定して設計しなければならなかった: 鳥取の灼熱の夏と厳しい冬だ。


しかし、そのコントラストがビジョンの一部となった。夏のサーフィン。冬の海辺でのキャンプ。サウナから海岸線まで歩く。構造物をデザインすることよりも、体験を形作ることのほうが重要になった。


コラボレーションと制約


クライアントは私たちに創造的な自由を与えてくれたが、現場には非常に現実的な制約があった:厳しいユネスコ区域、限られたインフラ、環境保護。そして、クライアントから請負業者へ、請負業者から市役所へ、市役所から亮へという慌ただしい連絡もあった。


日本で最も人口の少ない県への投資は、不安と無縁ではなかった。賭け金は高かった。しかし、制約に抵抗するのではなく、それを枠組みとして扱った。


地元の職人、大工、エンジニアと緊密に協力した。現場では、被覆材のサンプルをテストし、接合部を試作し、景観が許す範囲で調整した。あらゆる設計上の決定は、自然や気候、そしてこの地を最もよく知る人々との静かな交渉となった。


その結果 感情的に静かな空間


IWADO BASEは決してうるさくはない。環境を五感で感じてもらうことを意図している。


ファブリックの隙間から差し込む早朝の光の静けさ。足元の木目。演奏されるのではなく、存在する、フィルターにかけられない海の音。


ここは発明品のショーケースではなく、共鳴のプロセスだった。見世物ではなく、静寂によって自らを明らかにする場所。


だからこそ、このプロジェクトは、単に完成したリトリートとしてではなく、思い出として、重要であり続けるのだろう。山での電話。少ないものを求めた海岸線。デザインになった静寂。

 
 
 

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