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Beneath The Waves: The Work Behind Yokohama Kaikosai 2025 Temple Architecture



海風の祈り ― 開港祭2025の仮設神社の裏側で


この春、Makers’ Day!が終わった直後に、私たちのもとに一通のメッセージが届きました。

「今年の横浜開港祭で、小さな神社をデザインしていただけませんか?」

私たちは、「はい」と答えました。


神社の専門家だからでも、時間に余裕があったからでもなく、

それが私たちにとって、新しいデザインの挑戦になると感じたから。そして、ツールとクラフト、そして象徴性が、聖なる・一時的で・共有される空間とどう交差するかを試す機会になると思ったからです。


小さな場所に込めた大きな意味


第44回横浜開港祭は、港町・横浜の海洋史を祝うお祭りです。そこで私たちは、来場者が立ち寄って祈り、賽銭を入れ、やがて絵馬を掛けられる、小さな仮設神社のデザインを任されました。


規模は小さくても、そこに込める意味は大きなものでした。私たちは「青海波(せいがいは)」という伝統文様を基調に選びました。同心円状に広がる波は、「海・記憶・つながり・リズム」を象徴します。


神社の中央には、外に向かって配置された木製の船。祈願スペースには、古来より豊かさ・深み・守りの象徴とされるクジラの意匠を施しました。


構造全体は「軽量・持ち運び可能」を意識し、ほとんどのパーツはxToolレーザーカッターで自社制作しています。現代のデジタル加工が、伝統の意味をどう運べるか。それを試す機会でもありました。


ツールが速い=簡単、ではない


ひとつ、誤解を解いておきたいと思います。

たしかに、xToolを使えば、MDF板1枚から20~30個の御守(おまもり)を約23分で切り出せます。

でも、それは「1時間で全部できる」という意味ではありません。

今回は、合計1,000個を製作していますが、スピードは想像よりずっと地道です。

1枚1枚の素材のセットアップ切り出し後の安全な取り外し焦げの除去、裏返し、彫刻の調整、再配置品質確認、再ローディング…

作業のどの段階にも「人の手」が入ります。ミスが積み重なる前に気づき、調整し、次の工程を準備するのは、やはり人間なのです。

スタンプは想像以上に“手仕事”

スタンプも、意外に奥深い作業です。

普段のスタジオでも使っている、濃くて重たい青インク。粘度が高く、押すたびにムラが出やすい。

一つひとつ、インクの量を見ながら、体重を使って丁寧にプレス。少なすぎても、多すぎてもダメ。時にはやり直し。1個あたり約30秒。裏面にも押します。

乾かすのを待っている間に、うっかり逆面に押してしまうと、もう使えません。

紐も、手も、ひとつずつ

白と青の麻紐も、1本ずつ手で通して、手で結びます。

時に集中しながら、時に意識が別の場所に飛びながら――でも、必ず「誰かの手」によって結ばれる。

そして、それこそが、このプロジェクトの肝なのだと思います。

ものづくりにおいて、人の手は不可欠

祈り、触れ、手に取るために作るものに、近道はありません。

私たちは常に「手作業の価値」を信じてきました。そして今回、それを強く再確認しました。

波の模様を、パネルからパネルへときれいに繋げる。切断面の焦げをちょうどよく拭って、手が汚れないようにする。絵馬がスムーズに、でもしっかりと差し込めるように厚みを調整する。

機械にはできません。それができるのは、人だけです。

このプロジェクトで得たもの

この神社づくりは、私たちにとって実験でもありました。道具を試すこと、素材を調整すること、そして「一時的だけど、意味のある空間」を創り出すこと。

でも終わってみると、それ以上のものを得ていたように思います。

高効率なツールがあっても、最終的に「体験」を形づくるのは、作業の合間にある“人の判断”なのだという気づき。

直感、観察、手直し、そしてケア――

そのすべてが、今回の神社を支えていました。

そして今も、まだ御守を作り続けながら、楽しんでいます。

次にまた、「はい」と言えるプロジェクトが来るのを、すでに楽しみにしています。

読んでいただき、ありがとうございました。

— ISHIKAWASAMBO Mars

 
 
 

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