ONIGIRI
用途
所在地
設計
CG
計画時期
: ホテル
: 栃木県小山市
: ISHIKAWASAMBO
: ISHIKAWASAMBO
: 2020
おにぎりの家:新しい暮らしのかたち
日本において、米は単なる食料ではなく、文化や生活の基盤となる存在です。この伝統的な価値観を現代の建築に応用し、わずか25平方メートルの空間に、機能性・快適性・持続可能性を凝縮したマイクロホームを提案します。
この住宅のデザインは、おにぎりの形状から着想を得た、直感的で機能的な空間構成を特徴としています。曲線を活かしたフォルムは、生活動線を最適化し、コンパクトながらも圧迫感のない快適な居住空間を実現。さらに、地域の自然素材を活用することで、環境負荷を抑えながら、都市と地方の新たなライフスタイルの橋渡しとなる住まいを目指しています。
デザインの合理性と空間の最適化
この住まいの基本構成は、機能的なセンターコアと、流動的な居住空間の組み合わせです。
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センターコアには、キッチン・収納・トイレ・シャワーなどの設備を一括配置し、限られた面積を最大限に活用。
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カーブを活かした設計により、入浴・食事・仕事・くつろぎの各エリアをスムーズにゾーニング。
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大きな円形の浴槽と対面するシャワースペースは、視線を遮らず開放感を演出。
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キッチンとダイニングは一体化し、コンパクトながらも十分な作業スペースを確保。
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エントランスおよびリビングエリアには、機能的な収納を配置し、シンプルで整った空間を実現。
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円形のロフトには、360度回転可能なはしごを設置し、床面積を有効活用。
25平方メートルの住居は、円形プラットフォーム上に配置され、柔軟な空間活用と360度の眺望を確保。また、プラットフォーム自体をリビング・ダイニング・ラウンジの多目的スペースとして活用可能で、暮らしの可能性を広げます。
環境性能と持続可能なシステム
この住宅は、コンパクトでありながら、環境配慮と高性能を両立した設計になっています。
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外壁には漆喰(しっくい)を採用し、自然由来の調湿・抗菌機能を備えた快適な住環境を実現。
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木造構造をベースに、トリプルガラスの引き戸とアルミ製庇付き窓を採用し、断熱性とエネルギー効率を向上。
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カスタム設計の太陽光発電パネルと天窓により、自然光と再生可能エネルギーを最大限活用。
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雨水と融雪をカーブ構造が自然に集水システムへ誘導し、グレイウォーターの回収・処理・再利用システムと連携することで、持続可能な生活をサポート。
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室内は「ウェットエリア」と「ドライエリア」に明確に分割され、床仕上げには木材と地元産のセラミックタイルを使用。
これにより、自然と調和しながら、高性能で省エネルギーな住まいが実現します。
新しい地方移住の選択肢として
日本の都市部、とくに東京では、住宅価格の高騰・交通混雑・生活空間の不足といった課題が深刻化しています。一方で、政府は地方移住を促進し、新たな住まいの選択肢を求める動きが加速しています。
「おにぎりの家」は、都市から地方への移住をより魅力的にするための住宅モデルとして設計されています。
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農地の中に住宅を配置することで、都市では得られない広がりのある景観と自然環境を提供。
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コンパクトながらも快適な設計により、住みながら農業・リモートワーク・創造的な暮らしが可能。
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コストパフォーマンスの高い設計で、シンプルながら質の高い住環境を実現。
「おにぎりの家」は、単なる住宅ではなく、新しい地方の暮らしを提案するコンセプトハウスです。都市生活に疲れた人々にとって、持続可能で快適なスローライフを実現するための、新たな選択肢となるでしょう。
まとめ:未来へ向けたスモール・アーキテクチャー
本プロジェクトは、単なるマイクロホームではなく、都市と地方の未来をつなぐ建築的ソリューションです。
「拡大するのではなく、いかに空間を洗練させるか」。この問いを軸に、小さくても快適な空間デザイン、環境負荷の少ない住まい、そして自然と共生するライフスタイルを実現しました。
都市の喧騒を離れ、自然と調和しながら、必要なものだけを大切にして暮らす。
「おにぎりの家」は、これからの日本の暮らしを再定義する、建築の新たな試みです。





